一般的な痛みの解釈

筋肉や靱帯、関節などの運動器の痛みはすべて、「受容器」が「刺激」され、疼痛閾値を越えることで生じます(図1)。

これまで身体の痛みは、捻挫や打撲などの外傷、骨の変形、ヘルニアなどが原因で炎症が起こり、炎症産物が大量に放出されることによって受容器に対する刺激が強くなり、痛みが生じると考えられてきました。そのため、炎症を抑える消炎鎮痛剤(痛み止め、湿布薬など)が処方されてきました。

慢性期の痛みにおいても、筋の硬さや張りによって血液の循環不全が起こり、微細な組織損傷による炎症が原因と考えられることが一般的です(図2)。

それに対して、ストレッチやマッサージなどで筋をほぐし循環改善を目的とする処置をされたり、特定の部位への負担を減らすために、筋肉の弱い部分を鍛えるトレーニングや姿勢改善を行うことが多いのではないでしょうか。

急性期・慢性期どちらの痛みも『炎症が起きていることが原因』と考えられてきたのです。


SAS マニュアルセラピーの痛みの解釈

しかし、腰痛や肩こりに代表されるような慢性化しやすい運動器の痛みでは炎症所見は認められず、消炎鎮痛剤を用いても痛みが治まらないことが多く見られます。

多くの場合、「中腰になると痛い」「首を傾けると痛い」など、本来、痛みを感じないはずの些細な動作で痛みが生じたり、圧覚しか感じない程度の弱い力で押さえているにも関わらず、痛みを強く感じるようになります(図3・4)。

つまり、筋の硬結化やそれに伴う炎症によって刺激量(炎症産物や筋への強いストレス)が増えたことが原因なのではなく、センサーである受容器に異常が起こり過敏化したこと(感作と呼ばれる現象)が原因と考えられます。

このようなことが原因となっている痛みを治療するには、筋をほぐすことや炎症を抑えることで刺激量を減らすのではなく、過敏化した受容器を正常な状態に戻すこと(脱感作)が必要となります。


痛みの発生機序

一般的な捉え方

筋肉中の硬結

血液の循環不全

(微細な)組織損傷

炎症産物

閾値を超えて脳に伝わる

脳が痛みとして認知 

治療の目的

 筋硬結の軟化

 循環改善

 

SAS マニュアルセラピーの考え方

受容器の感作

閾値の低下

少しの刺激量でも閾値を超えた刺激量として脳に伝わる

脳が痛みとして認知

治療の目的

 感作された受容器を刺激することで、脱過敏化(脱感作)させる

 

スポーツ選手、一般人に関わらず日常生活を過ごしていく中で、身体の使い方に癖が出来てきます。その癖のために体に弱い部分や凝り固まった部分が生まれ、アンバランスな身体の使い方をしていくことでオーバーユースになった部分の受容器が過敏化を起こし、痛みを訴えることになります。

痛みを改善し、予防していくために、身体のアンバランスを改善することにフォーカスを当て、トレーニングを行うことで局所的に負担のかかりにくい体づくりが目指されます。しかし痛みがどこかにあると、それをかばって自分の思うように身体をコントロールできない(体の自由度が低い)状態でトレーニングを行うことになります。

まずは身体を痛みから解放し、代償動作をなくして身体の自由度を高めた上で、アンバランスを改善するトレーニングを行うことが根本的な治癒に導くためには必要であると考えます。

SAS マニュアルセラピーは、根本的な治癒を達成するために、まず慢性化する運動器の痛みからの解放を目的とする治療法です。

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